ティアムーン帝国物語 〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜@COMIC 9巻まで
原作: 餅月望, キャラクター原案: Gilse, 作画: 杜乃ミズ (TOブックス コロナ・コミックス)
いまいち(-10点) 2025年2月24日 ひっちぃ
ティアムーン帝国の皇女ミーアは革命により捕らえられ、しばし獄中生活を送ったのちギロチンで処刑された…かと思ったら、12歳の頃に時間が巻き戻っていた。処刑されるまでの記憶とそれまでの出来事をつづった日記帳とが彼女にはあった。小説投稿サイトに書かれた作品のコミカライズ版。
2023年にアニメ化されたのを見て、なんかおもしろくないなと思って3話ぐらいで見るのをやめたのだけど、アニメ化がいまいちだっただけじゃないかと思ってあきらめきれずにこのコミカライズ版を読んでみた。アニメよりは読み進められたけど、やっぱり自分には合わなかった。
一度失敗して人生をやりなおすタイプの作品の中で、この作品の一番大きな特徴は、ヒロインである皇女ミーアが自分勝手でアホなまま(!)だということだと思う。必死に自分の運命を変えようとした結果、意図しないところでそれがうまくいって運命が好転していく。
といっても最初は処刑される結末までは変えられない。なぜそれがわかるのかというと、なぜか手元にある自分の日記帳がまるで未来日記のように書き変わっていくから。でも変わるのは途中経過だけで、処刑される未来はなかなか変わらない。彼女は自らの運命を変えることができるのか?
子供向けの話だと思う。ヒロインは自己中心的だけど悪女というわけではなく、ただ無邪気に欲望のままに生きてきた少女だった。だから、過去に自分がなんとなくやってきたことが悪かったのだと反省はするのだけど、まだちょっとわかってなくてそれがギャグになっている。
自分は年をとったのかこのヒロインがどうしても好きになれなかった。これで許されるのかと。こいつは前の時間軸で自分を追い詰めた人物に対して内心でひどく怯えて警戒したり、どうにかして味方にできないか場当たり的に知恵を絞ったりする。ガキそのものだった。
自分がこういうギャグ作品を楽しめなくなっていることに驚いた。少なくとも高校生ぐらいまでの頃だったら楽しめたんじゃないかと思う。
人間ってのは生まれながらに善人とか悪人とかがあるわけではなくて、小さい頃からのいろんなできごとの積み重ねによって結果的に善人になったり悪人になったりするのだと思う。だから、彼女のように利己的な感情でいいことをしていっても善人としての人格が形成されていく。それがわかっていても、なお許せない自分がいた。
これは自分に刺さるからかもしれない。自分だってこのヒロインみたいにただ利己的にふるまって自己正当化してきただけじゃないのか?そんな同族嫌悪の感情を抱いてしまうのかもしれない。そう考えると、そういうことに気づかない子供じゃないと楽しめないというのもあるんだと思う。
そう考えるとこの作品は、ギャグに見せかけて高度な皮肉がこめられた大人向けの作品ってことになるんだろうか。いやいやさすがにそれは考えすぎか…。そういう人間の深いところが説明されていればまだ納得できたのかもしれないけれど、ただただエンタメに走っているのであまり笑えなかった。
そういう作られたお笑いの構造がガッチリとできているので、登場人物もそのとおりに動く人形のようにしか思えなかった。というわけでロクにキャラすら紹介していないのだけど、紹介する気になれないぐらい薄っぺらいのだからしょうがない。
じゃあなぜそんな作品を既刊分全部読んでしまったのかというと、ギャグマンガとしては最低限楽しめるし、未来がどのように変わっていくのか期待感があったからだと思う。こうして読み終えて見ると別に大した筋書きじゃなかったんだけど。
まだ第一部だからギャグ全張りなだけで、先を読んでいけばこのバカヒロインもなぜ自分が悪い女になってしまったのか自問自答する展開になるんだろうか?
絵は読みやすくて悪くなかった。でも、ヒロインのヘン顔の描写を見るたびにまたかと思ってしまった。この作品への愛着があればこの絵も好きになれたのかもしれないんだけど。
というわけであまり人に勧めたい作品ではないのだけど、勘違いキャラの全然見当違いな行いがなんだかんだで偶然良い方向に転がっていくようなギャグがすごく好きな人は見てみるといいと思う。
[参考] https://www.tobooks.jp/tearmoon/ index.html
(最終更新日: 2025年3月3日 by ひっちぃ)
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