Against the Storm
開発元: Eremite Games, パブリッシャー: Hooded Horse
傑作(30点) 2024年3月3日 ひっちぃ
プレイヤーは女王から任命された総督となり、嵐の吹き荒れる世界で森を切り開いて人々を定住させ、入植地を作っていく。プレイするたびにランダムに状況が変わるローグライクな要素をファンタジー風の街づくりゲームに組み込んだストラテジーゲーム。
たしかGoogleのフィードでこのゲームを紹介する記事が出てきたのを読んだのがきっかけで、常日頃からおもしろい戦略ゲームを探している自分としては早速チェックしてみたら、「圧倒的に高評価」な上にアーリーアクセス中でセールもしていて値段もお手頃だったので、最終的にホロライブの沙花叉クロヱの配信を見た上で買って遊んでみたらおもしろかった。なお、去年の年末に正式リリースされている。
【#おすすめさかまた】第三回!最近ハマっているゲームを紹介します!Against the Storm【沙花叉クロヱ/ホロライブ】
https://www.youtube.com/ watch?v=bQs8qP4ww0E
街づくりゲーにローグライクの要素ってどうやって組み込むのかと思ったら、森を切り開いていくに従って空き地にランダムで各種資源が見つかるようになっていて、その資源に合わせて街を作っていくことでゲームを有利に進めていくことができるようになっている。資源はそのままではあまり価値がないので、加工してより高い価値のものを生み出すと人々が満足する。
たとえば、繊維から生地を作り、生地から衣類を作ることで、人々の士気が高まる。一定以上の士気を維持すると名声が上がり、名声がある程度以上になると女王に評価されて入植地が完成し、ステージクリアとなる。
繊維が見つからないときもある。その場合、取れる手段はいくつかあって、まずは繊維の代わりになる葦や皮を探すこと。次にいったん別のものを作って商人に売り、そうして得たお金で繊維などを買ってもいいし、あるいは生地や衣類を直接買ってもいい。もしくは、衣類をあきらめて別の嗜好品を作ってもいい。たとえば粘土から陶器を焼き、麦を加工してエールを造り、酒場を建てて人々に振舞うことができる。陶器の代わりに樽や水袋を使うこともできる。
住人には種族があって、人間、ビーバー、リザードマン、ハーピー、フォックスがいる。種族によって得意なことや嗜好品が違っていて、毎回これらから三種類の種族が選ばれて住人となる。どの種族がいるかによっても当然のことながら戦略が変わってくる。
マップ上を住民が一人一人歩いている。こいつらが資材を運搬したり建築したりする。RimWorldとトロピコの中間ぐらい?RimWorldほどではないけれど人々が動く導線を意識しなければならない一方で、施設の中では資材はざっくり管理されており、作ったものは一定数まで蓄えられたうえで倉庫へと運ばれるし、資材を使うときも住民が歩いて倉庫へ行って取ってくる。
住民をちまちまとクリックして指示を与える必要はなく、施設をクリックするとその施設にどの種族をどれだけ割り当てるか選択でき、そいつらが適当に働いてくれる。施設では生産できるものがそれぞれ大体三種類ぐらいあって、材料があるものから適当に作ってくれるほか、優先順位とか上限なんかを設定することもできる。
施設を建てるためにはその施設の設計図が必要になり、名声が増えるごとにランダムでいくつか出てきたものから一つずつ選び取っていく。マップ上にある資源や住人の種族なんかを考えて最適なルートを探していくと効率が上がる。下手なものを選ぶとろくに生産できなくて詰むこともある。また、生産にかまけていると食料や薪が足りなくなって住民の士気がガタ落ちになったりする。
ワールドマップがあって、一つの入植地が完成すると次の入植地を作るために移動してまた最初から街づくりをやりなおすことになる。マス目ごとにバイオーム(気候みたいなもの)があって、それによって木を切ったときに木以外のものがとれたり、出現する資源に偏りがあったりする。
マップの中央に首都であるスモルダリング・シティがあり、そこから次の入植地へと移動していく。ところが一定の年月が過ぎると大嵐が来てすべての入植地が破壊され(!)、またスモルダリング・シティからやり直しとなる。
ただやり直しになると徒労感だけがあって萎えるのでそこはちゃんと考えられていて、「封印の地」と呼ばれる場所に隣接して入植を行い、そのマップで条件を満たして再封印をすると、大嵐が来るまでの期間が延びていく。また、経験値を積むことによっていろんな要素が解放されていったり、単純にゲームが有利になる要素が追加されていったりする。
現時点で66時間ほどプレイし、三つ目の封印の地の手前まで攻略したのだけど、ちょっと飽きかけてきた。
このゲームの賛否両論な点として、厳格なローグライクではない点をまず挙げるべきだと思う。というのも、毎回最初から入植地を作っていくのだけど、持っていけるアイテムが増えたりと、様々なアップグレードが恒久的に得られる。つまり、プレイヤーはノウハウの取得以外でも成長していく。初期と同じ状況ではプレイできなくなっていく。ホロライブの尾丸ポルカが配信でやったときにチュートリアルステージで失敗したのもそのせいかもしれない。
【Against the Storm】ポルカが村長!嵐の中で輝いて!【尾丸ポルカ/ホロライブ】
https://www.youtube.com/ watch?v=YHLVBCw_haI
じゃあこのゲームはどこでゲームバランスを調整しているかというと、入植開始時に難易度を選べるようになっていて、難しくすればするほど多くの報酬が得られるようになっている。その報酬は次の入植時に有利になったり、アップグレードを行うためのポイントの形だったりする。
ワールドマップ中央の首都スモルダリング・シティから離れるに従って、簡単な難易度が選択できなくなってくる。ちなみに、簡単な難易度で入植に大成功したとしても、得られる報酬に変わりはない。時間を短縮できるぐらいだろうか。
なお、名声がたまる前に女王の怒りが増えていって一定量を超えると入植失敗となる。その場合、ゲーム内の時間がその分過ぎてしまうが、大嵐が来るまではその場所からまた移動して次の入植をすることができる。
まだ自分が下手なせいかもしれないけれど、だいたい何かが足りなくてイライラする。下手に自前で用意するよりも、とりあえず落ちている箱をあけて適当な資材を手に入れて、それを元になにかしら売れるものを作って交易し、足りないものは商人から買った方が早いなんてことが多い。
街が軌道に乗ったらステージクリアでその街でのプレイは終わってしまう。続けることもできるのだけど、スコアは増えないし、いずれ資材が枯渇してしまう。一つの街を長い時間かけて育てていくような楽しみ方はできない。また、RimWorldのように外敵を迎え撃ったり逆に敵の拠点に攻め入ったりすることもできない。封印の地ではちょっと戦闘っぽい雰囲気があるけれど、複数のクエストを順に終わらせることでステージクリアとなるので武器を持って戦うなんてことはない。
音楽が地味によかった。陰鬱な中世ヨーロッパって感じのBGMが邪魔にならずにずっと流れている。このゲームのカギとなる要素である嵐が来たときのBGMとSEが特に素晴らしかった。ひたすら耐えるしかない風景が浮かんでくるようだった。そして嵐が過ぎ去ったときの安堵感。
とてもおもしろいゲームではあるけれど、名作と呼べるほどではないと思う。アップグレードは地味に長く楽しめるけれど、経験値稼ぎをしてまで楽しみたいとは思わない。数百時間遊んでいる人もいるらしく、実際遊ぼうと思えばそれぐらい遊べると思うんだけど、ある程度遊んでこのゲームに満足したら次のゲームに取り掛かりたい。フルプライスのゲームじゃないし、それで十分だと思う。
結局のところこのゲームは組み合わせの最適解を求めていくことに尽きる。あらゆる戦略ゲームがそうなのかもしれないけれど、このゲームの場合はちょっと露骨だと思う。なので、アップグレードしていくと様々な新要素が追加されるにも関わらず、本質的にはあまり変化がないんじゃないかと思う。ゲームプレイが高次になっていくとか(自動的に人員配置するしくみとか)、もっと爽快感のあるしくみとか(条件を満たすと一気にいろいろ解決するとか)、そういった工夫が欲しかったように思う。
施設に雨水ポンプをつけると作業が効率化されるのだけど、ただ効率の数字が上がるだけなのが物足りない。水をためておく施設から生産施設まで水路を引く必要がないのも味気ない。ポンプを接続するボタンを押すだけで開通してしまう。
絶対にプレイしたほうがいいゲームとまではいかないけれど、戦略ゲームが好きな人はやっておいて損のないゲームだと思う。自分ならではの街づくりをじっくり楽しみたい人には勧められないけれど、街が順調に発展しだしたら飽きるような人には絶好だと思う。
[参考] https://store.steampowered.com/ app/1336490/Against_the_Storm/
|